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近視抑制治療
(低濃度アトロピン点眼治療、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズ)

近視抑制治療近年、近視の子どもが増加していることが問題となっています。文部科学省の調査では「小学1年生の約4人に一人の裸眼視力が1.0未満」と言われています。
近視になると眼鏡やコンタクトレンズが必要になることがデメリットとしてよく知られています。しかし、もっと心配するべきデメリットがあります。それは、近視が強くなることで、将来的に目の病気(緑内障・網膜剥離・近視性脈絡膜血管新生など)を起こすリスクが高まるということです。
近視の進行は8歳前後がピークといわれています。治療が必要な子どもは早めの治療開始がおすすめです。

残念ながら、すでにある近視を根本的になくすことはできません。治療によって現状からの進行を抑制ことが目的になります。低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、多焦点ソフトコンタクトレンズの装用により、学童近視の進行を抑えられることが分かってきており、当院ではこれらの近視進行抑制治療を行っています(自由診療となります)。効果的な治療のためには、小学校低学年から治療を開始する必要があり、できれば20歳頃まで継続することが望ましいです。
また、上記のような治療に加えて、「屋外(日陰でもOK)での活動を2時間以上おこなう事」「タブレットなどの使用の際は30分に1回は休憩する事」なども近視の進行抑制効果があると報告されています。日常生活での近視予防も大切になります。


低濃度アトロピン
点眼治療とは

低濃度アトロピン点眼治療とは毛様体筋弛緩作用を持つ低濃度アトロピン点眼を使用することで、近視の進行をある程度抑制することが可能です(効果の出ない方もおられます)。毎日、夜寝る前に1回、1滴の点眼を行うだけですので、継続しやすい治療です。
2019年に香港で行われた低濃度アトロピンによる近視進行抑制研究(LAMP study)では、1年間の低濃度(0.01%または0.025%)アトロピン治療によって、近視の進行を27〜43%抑えられたという結果でした。
アトロピン点眼は、濃度が高いと動悸やまぶしさ、頭痛といった副作用がよく見られますが、0.05%までの濃度であれば安全であると報告されています。
現在、日本国内ではアトロピン点眼は近視治療としての保険適応はありません。 
日本国内で入手可能な低濃度アトロピン点眼薬はマイオピン(0.01%、0.025%)です。 自由診療での処方となります。
出典:Yam JC, et. al. Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP) Study: A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Trial of 0.05%, 0.025%, and 0.01% Atropine Eye Drops in Myopia Control. Ophthalmology 2019
参考サイト:https://www.myopine-eyelens.sg

オルソケラトロジーとは

オルソケラトロジーとは、夜間にコンタクトレンズを装着して眠り、起床時にコンタクトレンズを外すことで近視を矯正する方法です。コンタクトレンズが角膜の形状を調整して焦点を合わせることで、視力の改善が期待できます。
手術の必要がなく、夜間にコンタクトレンズを装着するだけで、日中は裸眼で快適に過ごすことが可能になるのが、オルソケラトロジーの大きな特徴です。
現在、日本ではオルソケラトロジーは近視治療としての保険適応はありません。自由診療となります。

オルソケラトロジーで
近視抑制・近視矯正が
できるメカニズム

オルソケラトロジーで近視抑制・近視矯正ができるメカニズム近視は角膜の形状が関係しており、角膜のカーブがきつくなると近視が強くなります。オルソケラトロジーで装着するコンタクトレンズには内側に特殊なカーブがデザインされており、そのカーブに沿うようにして角膜の形状を矯正します。変化した角膜の形状は一定時間保持され、起床後にコンタクトレンズを外しても、日中は矯正された角膜の形状が保たれるため、裸眼でも視力を維持できるようになります。また、この角膜形状の変化が、子どもにおいては近視抑制効果を生むといわれており、2017年にスイスで行なわれた研究では、オルソケラトロジーを7年間使用して約33%の近視抑制効果があったと報告されています。
出典:Santodomingo-Rubido, et al. Long-term Efficacy of Orthokeratology Contact Lens Wear in Controlling the Progression of Childhood Myopia. Curr Eye Res 2017

オルソケラトロジーの
使用がおすすめの人

お子様~若年層の方

近視が進行しやすい若年層は、角膜が柔らかいため、オルソケラトロジーによる視力改善効果を得やすいです。日中の裸眼での視力改善だけでなく、近視の進行を抑制する効果も期待できるため、成長期のお子様にはオルソケラトロジーの使用がおすすめです。

軽度の花粉症の方

花粉症の方で普段コンタクトレンズを使用している方は、花粉症の時期だけは眼鏡を使用している方が多いです。しかし、オルソケラトロジーであれば日中は裸眼で過ごせるため、花粉症の症状緩和の点眼も気にせずに使用できます。

スポーツをしている方

オルソケラトロジーには裸眼での視力改善効果があります。そのため、スポーツをする際に眼鏡やコンタクトレンズを使用する必要がなく、本来の実力を発揮できることが期待されます。また、水泳やサーフィンをする場合にも適しています。

近視矯正の外科手術に
抵抗がある人

近視矯正の外科手術には合併症や後遺症などのリスクがあり、手術に抵抗を感じる方もいます。一方で、オルソケラトロジーは手術のリスクはなく、コンタクトレンズを装着するだけで安全に視力矯正ができるため、手術に抵抗がある方にもおすすめです。
また、一度外科手術を受けると角膜を元の状態に戻すことはできませんが、オルソケラトロジーでは夜間のコンタクトレンズ装着を中断することで、角膜の形状を元に戻すことが可能です。

オルソケラトロジーを
使える年齢は?
大人も使用できる?

約6~65歳まで
使用できます

オルソケラトロジーには基本的に年齢制限はなく、一般的には6~65歳までが適しているとされています。
お子様の場合、保護者の方がコンタクトレンズの着脱や管理をサポートできれば、早くて6歳頃から使用できます。
一方で、老眼を自覚する年齢である45歳以上の方が使用すると、手元が見えにくくなる可能性があります。その場合は、コンタクトレンズの度数を弱めたり、使用頻度を少なくしたりして使用することもありますが、一般的には65歳までが適しているとされています。

オルソケラトロジーは
いつまで続ける?

オルソケラトロジーを開始した後は、就寝時のコンタクレンズ着用は毎日継続する必要があります。コンタクトレンズの装着を中止すると、2週間~1ヶ月程度で角膜が元の状態に戻ってしまいます。
お子様の場合は、オルソケラトロジーを長期間使用することで、近視の進行を抑制する効果が期待されます。15~18歳頃には近視の進行が緩やかになるため、この時期までは治療を継続することが望ましいです。ただし、近視の進行によってオルソケラトロジーの適応範囲を超える場合は、治療を中断しなければなりません。
大人の場合、就寝時にコンタクトレンズの着用を継続している限り、日中の裸眼での視力改善効果は得られますが、近視の進行抑制の効果はありません。

オルソケラトロジーの
デメリットはある?

視力が安定するまで
時間を要する

オルソケラトロジーの治療開始直後は、日によって見え方が異なったり、日中の視力矯正効果の持続時間が短かったりすることがあり、視力が安定するまで時間がかかります。治療を続けることで少しずつ視力は安定し、日中の視力矯正の効果が持続する時間も長くなります。

レンズのケアが必須

オルソケラトロジーでは、コンタクトレンズのケアが重要です。コンタクトレンズを清潔に保てない場合、角膜炎、角膜上皮障害、角膜感染症、角膜内皮障害、巨大乳頭結膜炎などを引き起こすリスクがあります。特に角膜感染症はまれですが重篤な合併症です。
感染の予防のために、特にお子様の場合は、保護者の方がコンタクトレンズのケアをしっかりと行うことが大事です。
*アメリカで2005年から2007年にかけて行われた調査研究では、1万人の患者さんが1年間オルソケラトロジーを使用することで7.7回の角膜感染症が発症すると報告されています。
出典:Bullimore MA, et. Al. The risk of microbial keratitis with overnight corneal reshaping lenses. Optom Vis Sci, 2013

オルソケラトロジーが適応できない場合もある

オルソケラトロジーは近視や乱視の方が治療の適応になりますが、以下の条件に該当する方は適応外となります。

  • 装用時の異物感が強く継続困難な方
  • 眼部に炎症、感染症のある方
  • 角膜に障害のある方
  • 眼瞼の状態に異常のある方
  • ドライアイのある方
  • レンズの装用やケア用品によって眼やその周囲にアレルギー反応を起こす方
  • 免疫状態の低下や糖尿病のある方
  • 医師の指示に従った適切な使用ができない方や必要は衛生管理ができない方
  • 定期検査を受けられない方
  • 職業として常時の適正視力が必要な方

オルソケラトロジーの治療開始前に適応検査を受けていただき、適応があると判断された方のみ治療が受けられます。

強度の近視・乱視は
矯正できない

オルソケラトロジーは、軽度の近視や乱視の方に適した治療法です。通常、近視度数が-4.00Dまで、乱視度数が-1.50D以下の方が治療の対象になります。そのため強度の近視や乱視の方は、オルソケラトロジーの適応外となります。
ただし、角膜の形状や年齢によっては治療の適応となる場合もありますので、オルソケラトロジーをご検討の際には、一ひらの眼科へご相談ください。

オルソケラトロジーの
流れ

1適応検査&トライアル装用

オルソケラトロジーレンズの装用に適しているか、近視の度合いや眼の健康状態を調べます。検査で問題なければ、院内のトライアルレンズを装用していただきます。
(税込5,500円支払い)

2お試し装用【約1か月間】

個々の患者様の眼の状態に合わせた専用レンズを装用します(税込50,000円支払い)

自宅での装用を開始していただきます。
装用開始の翌日、開始後約1週間後、開始後約3週間後に診察に来ていただき、目の状態を確認します。
この際に継続を希望されるか決めていただきます。

3治療の継続

お試し装用後に、このまま治療を継続する場合は、追加費用の支払いが必要です。(税込134,500円支払い)
*治療継続しない場合は35,000円返金 します(レンズの返却が必要となります)

4定期検査の受診

治療を継続している間は、3か月ごとに定期検査の受診が必要です。

※治療を継続しない場合は、専用レンズを返却 していただく必要があります
※治療の継続を希望されても、眼の状態や、適切な管理や通院ができない場合は、治療を中止していただくことがあります。(この場合もレンズを返却していただきます。)

費用

初年度にかかる費用(両眼)

初年度費用

190,000円(税込)

費用内訳

適応検査&トライアル装用 5,500円(税込)

お試し装用【1か月間】
∟専用レンズの使用料
∟お試し期間中の検査費用
∟初回ケア用品

50,000円(税込)
治療継続費
∟専用レンズ代
∟1年間の定期検査代
∟専用レンズの破損交換保証(1年以内・片眼につき1回)
∟レンズケース(1年分)
134,500円(税込)
※その他費用(別途)
レンズの紛失
35,000円(税込)/1枚

2年目以降にかかる費用

費用内訳

定期検査代 5,500円(税込)/1回
レンズの定期交換
*最低でも2年毎の交換をおすすめしています
35,000円(税込)/1枚
  • 本治療は保険の対象外、自由診療となります。
  • 本治療中に、眼科医が必要と判断した場合は、その疾患に対する眼科的治療を受けてください。
    その際、費用は別途かかります。
  • 医療費控除の申請が可能です。当院から発行した領収書は大切に保管してください。

多焦点ソフト
コンタクトレンズ治療とは

多焦点ソフトコンタクトレンズは、日本では老眼の方が装用するコンタクトレンズですが、子どもの装用で、近視の進行を抑える効果があります。欧米では子どもの近視進行抑制治療として正式に認可されています。
ソフトレンズであるため装用感が良く、オルソケラトロジーの適応とならない、進行した近視のお子様にもお使いいただけます。